第32章 最愛
隊員たちを支える産屋敷家の方々は鴉からの伝達通り懸命に正確に図面を引いていく。
しかし、未だ眠る父や母、姉たちを想い、かなた様の瞳にはじんわりと涙が滲む。
輝「泣くな。」
か「!!」
しかし、涙がこぼれ落ちるよりも早く、妹の異変を感じ取った輝利哉様の凛とした声が部屋に響く。
輝「絶対に手を止めるな。私たちは負けない。」
か「はい!!」
そんなお三方を部屋の外で警備する元炎柱 煉獄槇寿朗と元音柱 宇髄天元。
ずっと沈黙していた2人だったが、部屋の中の輝利哉様のお言葉を聞き、宇髄が槇寿朗に話しかける。
宇「輝利哉様は御立派なことだ。父が不在のこの状況で鬼殺隊の指揮を執り己の使命を果さんとしておられる。なぁ、煉獄さんよ。」
槇「…そうだな。年端もゆかぬ子供たちがこれ程我が身を奮い立てているのだ。私も杏寿郎同様、煉獄家の名に恥じぬよう命を賭してお守りする。」
槇寿朗の言葉に宇髄は耀哉様、あまね様、ひなき様、にちか様を警備している煉獄のいる部屋の方を向きながらぼやくように呟く。
宇「ったく、本人に言ってやりゃあいいのによぉ。」
槇「うるさい奴だな。放っておけ。」