第5章 花屋敷
サ「杏!!オキナサイ!!」
サクラの声を聞き、目を開ける。
窓から入ってくる朝日に少し眩しさを感じつつも身体を起き上がらせる。
『おはよう、サクラ。』
サクラの頭を優しく撫でる。
鏡の前に行き、台の上の櫛を取って昨夜と同様に髪を丁寧に梳かしていく。
サラサラと揺れる黒髪に触れ、ハーフアップに結いサイドに寄せる。
小さなお団子をつくり、櫛の近くに置いてあった杏の花がモチーフの簪を挿す。
結った髪を鏡で見て確認し、よし、と呟く。
立ち上がり、自室を出る。
目の前の鍵のかかった部屋の前に行き、額と右手を扉につく。
『…おはよう。』
そのまま廊下を歩き、衣装部屋へ向かう。
杏の屋敷には衣装部屋が2つある。
1つは、隊服や羽織、日輪刀など鬼殺隊に関連のあるものを置く部屋。
もう1つは、任務がないときに着る着物や浴衣などの普段着を置く部屋。
杏(今日は任務ないし…)
そう考えながら、普段着を置いてある衣装部屋に入る。