第17章 刀鍛冶の里-強襲
──時透が玉壺の頸を斬り落とす少し前。
杏は水面を叩いたり、蹴るなどして脱出を試みていた。
サ「杏!!頑張ッテ!!モウ少シシタラ霞柱ガ来テクレルカラ!!」
近くに到着したサクラは声をかけ続ける。
──コポコポ
杏(…まずい。肺の中の残りの空気が少なくなってきた。)
水面を叩いたり、蹴りをいれたりしても粘性のある水の膜はグニャリとなり、割れる気配がない。
杏(てかあの鬼…私が死ぬ前にはここから出すとか言ってたくせに全然戻ってこないし…。そろそろまずいのだけど…。)
玉壺が去っていった方角を見るも何も見えない。
心配そうにこちらを見つめるサクラの方へ手を翳し、水の膜越しに撫でる。
──コポッ
少しずつ空気が肺からなくなっていくのを感じながら自分の小さな掌を見る。
杏(……こういうとき、しのぶさんほどではないけれど自分の身体の小ささを実感する。もっと身体が大きければ肺に蓄えられる空気ももっと多かったのに…。唯一の武器である小刀まで…、
私は一体何をしているの。)
少し離れた地面に転がる小刀に視線を移し、グッ、と唇を噛みしめる。