第7章 自覚と覚悟
『それは良いですね!!』
しのぶの言葉にわぁ、と無邪気に笑う杏。
『私は柱合裁判での印象が最悪でしたけど、やっぱり話してみるとよくわかります。』
ニコッとほほえみかける。
し「では、それまでに少し時間をつくらなければなりませんね。」
ふふっ、と微笑むしのぶ。
柱は暇ではない。
鬼殺隊の最高位であり、常に忙しいため1人の一般隊士に時間を割くことは基本的にない。
杏(炭治郎くんは贅沢者ね…。柱の中でも特に多忙なしのぶさんのお時間を頂けるなんて。)
加えて、しのぶは蝶屋敷で怪我を負った隊士たちの治療や薬、毒の制作もあり、柱の中でも忙しさは随一だ。
『よろしくお願いします。』
し「はい。お任せください。」
お互いにほほえみ合う2人。
『では、失礼します。おやすみなさい。』
し「はい。おやすみなさい。」
今度こそ、軽く頭を下げ蝶屋敷をあとにした。
杏(炭治郎くんはともかく、禰豆子さんは鬼。
……大丈夫かしら。)
月が浮かぶ夜空を眺めながら歩く杏。
杏(すぐには無理でも、少しずつ……。)
しのぶの姉、カナエが存命だったときのしのぶを思い出す。
『いつかまた、あんな風に怒ってくれるといいな…。』
そんな杏の呟きは夜の闇に溶けていった…………。