第43章 きっといつか
伊(強い衝撃を受け刀の温度が上がったのではないだろうか。刃を赫く染めるのは死の淵に追い詰められてこそ発揮される“万力の握力”!!)
刀を自身最大の威力で刀を握り始めたその瞬間、伊黒の刀が赫く染まり始めた。
けれど、
伊(まずい。しくじった…。視界が四方に弾けている。)
無惨に有効な攻撃を与えるため、刀身を赫くしようと躍起になりすぎて全ての力を握力に振った伊黒は戦闘の最中──…酸欠で失神しかけていた。
そんな彼の異変に真っ先に気づいたのは不死川だった。
不「伊黒ーーーー!!」
──ギュルッ
迫り来る無惨の攻撃。
体がふらつき、避ける余裕がない伊黒。
そんな彼に走馬灯のようにたくさんの思いが駆け巡る。
伊(1人抜けたら他の者の負担が増える。無惨の攻撃を分散出来ない。しっかりしろ。甘露寺の分も戦う…俺が──)
それなのに。
伊(駄目だ。手以外の感覚が飛んでる…。)
そんな伊黒を助けようと、冨岡が懸命に走る。
──ガヒュンッ
冨岡の目の前で非情にも土埃が舞った。