第36章 兄の願い
甘(はっ…恥ずかしいわ!!恥ずかしいわ!!ちょっと焦っちゃった!!力み過ぎちゃった!!私何してるのかしら!!)
落下していく甘露寺を伊黒は素早く助け出す。
──ストッ
助けた伊黒は甘露寺をその場に下ろすと顔を逸らしたまま静かに諭した。
伊「甘露寺。相手の能力の分からないうちはよく見てよく考えて冷静に行こう。」
その額には冷たい汗が滴り落ちる。
甘「…はい。」
甘露寺もまた、恥ずかしさから顔を逸らしたまま小さく返事を返した。
そんなやり取りをしている時だった。
──ベンッ
琵琶の音と共に2人の地面だった場所が扉の様に開いた。
すぐに反応した2人は互いに壁のでっぱり等を掴み、急いで足場のある場所へと回避する。
けれど、着地した場所からまた扉のように地面が開き、2人をこの屋敷の底へ落とそうとしてくる。
何度も何度も躱していると今度は伊黒の横から建物が潰そうと襲いかかる。
──ドゴォン
言い表すならばまるで絡繰屋敷のようだ。
そしてその勢いのまま甘露寺と伊黒を離していく。
甘「伊黒さん!!」