第3章 おはぎと抹茶
不死川は、杏寿郎と共に自身を鬼から救ってくれた大恩人である。
そして不死川自身も稀血であることから、同じく稀血である自分のことを本当によく気にかけてくれている。
時折向けられる兄のような優しい笑顔が、咲は大好きだった。
「あ、そうだ不死川さん、この間森でこんなものを見つけましたよ」
咲は鞄から、風呂敷に包まれた何やら歪な形をしたものを取り出した。
布を解くと、中からは手頃な大きさの木片が現れる。
「こいつァ、カブトムシの巣箱に入れたらちょうど良さそうな木だなァ!」
「よかった!そう思って拾ってきたんです」
「そうかァ。ありがとな、咲」
ニコリと不死川が笑う。
普段の表情からは想像もつかないような笑顔のまま、咲と不死川はしばし、不死川が飼っているカブトムシの世話に勤しんだのだった。