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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第20章  番外編 其の壱【R18含む】



それからまた数年。

三歳になった桜寿郎は、すでに咲では追いつけないような素早さで走り回るようになっており、庭で鍛錬している杏寿郎の姿に影響されたのか散歩した先で見つけた手頃な木の枝をブンブンと振り回すのがお気に入りの遊びになっていた。

杏寿郎の真似をして庭で木の枝を振り回す息子の姿を、咲は縁側に腰掛けながら見つめる。

焔色の髪が陽の光を浴びてキラキラと輝いていて、まるで妊娠中に見た大篝火のようだと思った。

そしてその楽しそうな横顔は、本当に杏寿郎そっくりだった。

(良い子に育ってくれている…)

そんなことをしみじみと咲が思っていると、玄関の方から「ただいま戻りました!」という杏寿郎の威勢の良い声が聞こえた。

咲が出迎えに向かう前に、杏寿郎は直接庭へと回ってきたようで、生垣の向こうからニコッと笑顔を浮かべた顔をのぞかせた。

「咲、桜寿郎!今戻ったぞ!」

「お帰りなさい、杏寿郎さん」

「ちちうえ!おかえりなさい!」

桜寿郎が枝を持ったまま駆け寄っていく。

その息子の目の前に杏寿郎はしゃがみ込むと、刀と一緒に脇に差していた棒状のものを差し出した。

「桜寿郎!これをお前にやろう!」

それは、子どもでも持てる長さの竹刀であった。

こんなに小さなものは見たことがないから、おそらく特注品であろう。

「わぁ、これはちちうえの持っている棒と同じものですね!」

「”竹刀”だ、桜寿郎。そうだとも!俺と同じものだ!!これからはお前にも稽古をつけてやろう!!」

「ありがとうございます!!ちちうえ!!」

ダーッと、竹刀を持ったまま庭の中央に駆けていく桜寿郎。

そして杏寿郎がやっているように上段に構えてブンブンと何度も振り始めた。

「桜寿郎、とてもお上手ですよ」

そう咲が声をかけると、太陽の光の中、桜寿郎は杏寿郎そっくりの顔をしてニコッと笑い返した。

その光景はあまりにも可愛く、そして美しかった。

いつの間にか咲の横に並んで立っていた杏寿郎が、咲の肩を抱き寄せて見下ろしている。

その精悍な笑顔を見上げながら、咲もまた花の咲いたように笑ったのだった。


(終)

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