第20章 番外編 其の壱【R18含む】
槇寿郎と千寿郎を門前で見送った二人は、「千寿郎が嬉しそうで何よりだ」などと話しながら玄関へと歩き出した。
煉獄家は大きな屋敷ながら、正門から玄関までの距離はそれほど離れていない。
あっという間に玄関に到着し、咲を先に家に入れた杏寿郎が後ろ手でガラガラガラと玄関の扉を閉じた。
「そうだ杏寿郎さん、今日のお昼で何か食べたいものはありますか…」
と咲が振り返った時、すぐ目の前には杏寿郎の胸があり、咲はあっという間に抱きしめられていたのだった。
「!」
頬を赤らめる間もなく、顎に手を添えられ口を塞がれるような接吻をされる。
ちゅっ、ちゅうっ、と杏寿郎の熱い唇が角度を変え深さを変えて落とされる。
「ふっ…んんっ…!」
普段の優しい抱擁ではなく、身動きも取れないほどに抱きすくめられ口を塞がれる。
咲の鼻からは思わず甘い声が漏れ、杏寿郎の腕でがっしりと押さえられた腕はジタバタとほとんど意味を成さない動きを繰り返した。
「ん…」
杏寿郎の鼻からも咲同様に甘い吐息が漏れ、それからようやく唇が離れていった。
「は…ぁっ、あっ…きょ、きょうじゅろ、さ、ん?」
突然の猛烈な愛情表現に未だ呆然とし、赤面しながら息を切らしている咲を見下ろしている杏寿郎の大きな瞳は爛々と輝いていた。
「咲…」
また杏寿郎の顔が近づいてきたので、咲は慌てて声を上げる。
がっしりと抱きしめられている今、出来るのは声を上げることくらいだったからだ。
「きょ、杏寿郎さんっ、ここでは…っ!!玄関ですし…っ!!」
「む!そうだな!」
そう言うやいなや、杏寿郎は咲の膝の裏に手を差し入れて、横向きにその体を抱き上げた。