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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第20章  番外編 其の壱【R18含む】



「ふーん、なるほどねぇ」

その後、普段はあまり声のトーンを下げるということをしない杏寿郎が、珍しく声量を抑えながら語った話を、宇髄は確認の意味を込めて復唱した。

「つまり、初夜の時もその後の行為の時も、咲が苦しそうにしていると。本人から直接”痛い”と言われたことはないが、表情や体の反応から何となくそう感じると、そういう事なんだな?」

「うむ」

「なるほどなぁ」

顎に手を当てて天井を仰ぐようにしながら、宇髄はチラリと杏寿郎の表情を伺う。

胸を張って腕を組み、膝をわずかに広げて正座をしている杏寿郎の、形の良い輪郭が頬のあたりで僅かにぷっくりと膨らんでいて口元はきゅっと引き結ばれている。

そしてその両目は大きく見開かれて、どこを見ているのか分からない猫の目のようになっている。

正直、杏寿郎がこの様な表情をしている時にどんな感情でいるのかは、長年付き合ってきた宇髄ですら測りかねている。

その瞳を真正面から見つめていると、異次元空間に引き込まれてしまいそうな錯覚すら受けるのだ。

だが宇髄は、杏寿郎のこの表情に何とも言えない滑稽さというか可愛らしさを感じていて、非常に気に入っているのだった。

「だからな宇髄、君の知恵を借りたいのだ!」

天井を見つめている(フリをしている)宇髄の意識を引き戻すように、杏寿郎が声を上げる。

その声のトーンは普段通りの弾けるような大音量に戻っていた。

「嫁が三人もいるから、経験豊富そうだってことか?」

「うむ!それもあるが、それでは奥方殿達に対してあまりに無遠慮だ!そこで、俺の浅学な知識なのだが、忍にはそのような手練手管の術が存在すると聞き及んだ。それをどうかこの無知な俺に伝授してはくれぬだろうか!!」

そう声を張り上げ、再度杏寿郎は頭を下げた。

その威勢の良さ。

言動の清々しさ。

誰がどう見ても、房中術という艶めかしいものの伝授を願い出ている男の振る舞いには見えなかった。

そんな杏寿郎の姿に、宇髄は不覚にも感動を覚える。

もちろんこの太陽のように真っ直ぐな男には、全力をもって教えてやるつもりだ。

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