第19章 その後のはなし
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それからほどなくして咲は、杏寿郎にソックリな男の子を産んだ。
名は、桜寿郎(おうじゅろう)。
煉獄家の男児は代々金色の獅子のような容姿で生まれてくるが、その子もまた立派な獅子の姿であり、父親譲りの太くてキリリとした眉毛が特徴的な、非常に快活な子であった。
そしてその数年後、今度は咲そっくりの女の子が生まれた。
杏寿郎の母・瑠火から一文字を取って、火凛(かりん)と名付けられたその子は、肌が白く、サラサラとした絹糸のような黒い髪を持ち、ニッコリと笑った顔が母親の咲に瓜二つの可愛らしい女の子であった。
桜寿郎はむつきが取れる頃には父親の杏寿郎の真似をしておもちゃの棒を振り回すようになり、10歳にもなるとその太刀筋は子どもとは思えないほどの堂々としたものになっていた。
その日も桜寿郎は庭に出て、父から課された修行内容に熱心に取り組んでいた。
「桜寿郎、少し休憩にしませんか」
縁側からそう声をかけたのは、母親の咲だった。
その隣には5歳の火凛が、お茶と菓子鉢の乗ったお盆を、プルプルと震える小さな手で一生懸命持っていた。
「母上!!」
桜寿郎はパアッと笑顔になると、竹刀を小脇に抱えたまま駆け寄って行った。
そして妹の持つお盆をサッと持ってやると、「火凛、ありがとう!」と笑った。
咲が少し難儀そうに腰を下ろすのに手を貸しながら、桜寿郎も縁側に腰掛けた。