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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第18章  共に







「急いでください!!」

全ての壁が白漆喰で塗り込められた部屋の中で、しのぶの高い声が響いた。

甚振を討ち果たした一行は、駆けつけた応援の隠達の手によって蝶屋敷へと運び込まれたのだった。

甚振と戦っていた者は誰も彼も傷だらけで、黒い隊服を赤く染めるほどであった。

だが、幸いにも命に別状は無い。

ただ一人を除いては。

左腕を失うという重症を負った咲は、今まさに生死の淵に立たされていた。

「咲っ!咲っ!気をしっかり持つのですよ!!私が絶対に助けてあげますから!!」

手術用の白い服に身を包んだしのぶが、額に汗を浮かべながら、必死に処置する手を動かしている。

助手を務めているアオイも、今にも泣き出しそうな顔をして動き回っていた。

処置台に寝かされた咲の顔からは血の気が失せて真っ白で、ゼィゼィと浅い息を繰り返している。

片腕を切り落とされた状態で動き回ったせいで、かなりの量の血を失ってしまっていた。

「しのぶ、さん、ありがとう…ございます…」

青白い顔にうっすらと笑みを浮かべて咲は言う。

その声はまるで絞り出すような音で、細く開いた瞳は今にも閉じてしまいそうだった。

「咲!無理して話さなくていいですから!!」

だが、咲の口ははくはくと動き続けた。

「兄、さん…、おにい、ちゃん…」

咲の小さな唇が、突如、知らない者達の名前を呼ぶ。

真っ白になった細い手が、ゆっくりと持ち上げられた。

「咲!?」

すぐ脇に控えていた杏寿郎が真上から顔を覗き込むが、咲はそれに気づいていないようだった。

不死川や炭治郎たちも、寝かされている咲を取り囲む。

焦点の合わない咲の瞳は、杏寿郎の顔を通り越して、別の何かを見つめていた。

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