第18章 共に
不死川の怒気に当てられているのは隠だけではないようで、鬼もまたその恐ろしさに慄いているのかもしれなかった。
なにしろ、不死川が斬り伏せた鬼以外には、それ以降一体も出現せず、至って静かなものだったからだ。
おかげで事後処理もあっという間に終了した。
不死川を先頭にして、同行していた剣士や隠の一団はゾロゾロと列をなして山を降り始める。
不死川は傍らに呼び寄せた咲を見下ろして、他の誰にも見せないような穏やかな表情で話していた。
「咲、久しぶりの夜の任務だったんじゃねェかァ?疲れたかァ?」
「いえ、大丈夫です!不死川さんがあっという間に鬼を倒してくださったおかげで、随分早く終わりましたから」
自身の肩よりも低い位置でニコニコと笑う顔に、在りし日の妹達の姿を重ねて、不死川はホワホワと頬を緩ませる。
まだ日付も変わらぬ時刻だ。
夜を徹して任務に当たることもザラにある中で、これほど早く任務が終わるのも珍しい。
早々に宿に戻ってゆっくり休もうと、誰もが思っていた。
その緩んだ気持ちを、目の前に広がった光景が唐突に切り裂いたのだった。
「ヒッ…」
隊士の内の誰かが発した、引き攣るような短い悲鳴。
深い闇へと続く森の木々の、太い枝の一本一本に、老若男女様々の人間の体が、股から喉にかけてズブリと突き刺されていた。