第18章 共に
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咲に下っていた夜間任務禁止令が、このほどやっと解かれた。
そしてさっそく、久々の鬼殺事後処理任務についていた。
任務の担当剣士は、風柱・不死川実弥だ。
その不死川は、くるくると立ち働く咲達から少し離れたところに立ち、「チッ」と不満げな舌打ちを漏らしていた。
強い鬼が出たとの知らせを受けて駆けつけてみれば、出てきたのは雑魚鬼。
着いて早々に、飛び出してきた鬼の首を一刀両断し、そのあまりの歯ごたえのなさにがっかりしていたのだ。
「風柱様、後はわたくし達に任せて、一足先にお帰りいただいても大丈夫ですよ。護衛の剣士さんも残って下さっていますし…」
不機嫌極まる雰囲気を発散している不死川があまりにも恐ろしく、その怒気に当てられた隠達が涙目になっているので、見かねた隠が一人、恐る恐る不死川に進言した。
だが不死川はヒラヒラと手を扇ぐように振る。
「…別の任務も入ってねぇから、いい。それに咲がいんだろうがァ。俺が帰っちまった後に、咲の身に何かあったらどうすんだァ」
不死川の咲贔屓はすでに隊内で有名であったが、誰も羨んだり妬んだりする者はいない。
理由は単純で、不死川が死ぬほど怖いからだ。
あの猟犬みたいな男につかず離れず側にいられたりなどしたら、気が触れてしまう。
むしろそこまで気に入られてしまっている咲に同情する…。
と、そこまでは言い過ぎかもしれないが、事実、縫製係の前田まさおが(完全に自業自得ではあるが)不死川に怒鳴られておしっこを漏らしたという前例もあるので、隠が不死川に抱いている畏怖の念は相当のものがあった。