第2章 逢魔が時
「あーっ、咲ちゃん!おはよう!」
庭に出ていたらしい善逸がバタバタと縁側から駆け上がってきて、咲の真正面に座り込んだ。
「我妻さんにも。どうぞ、今月のお給料です」
「ありがとう!!俺のことは善逸でいいよ~!」
ニヘニヘと、鼻の下が顎にまで届いてしまうのではないかと思われるほど顔を緩ませて、善逸が言う。
昨夜、杏寿郎にぶっ飛ばされたことなど、すでに忘れてしまっているようだ。
「善逸!近すぎるぞ!」
咲がやや困惑した表情を浮かべていることにいち早く気付いた炭治郎が、善逸の首根っこを掴んで引き剥がす。
なんだよぅ、たんじろ~!と善逸が不服そうな声を上げているところへ、伊之助が飛び込んできた。
庭で刀の素振りでもしていたのだろうか、うっすらと体に汗をかいている。
だが、暑いだろうに相変わらず頭には猪の被り物をしているのだった。
「伊之助さん、今月のお給料です」
「グワハハ!!これで天ぷらがたくさん食える!!」
そう言って笑い声を上げる伊之助もまた、昨夜のやり取りなどはすっかり忘れてしまっているかの様だった。