第14章 冨岡さん、一体どういうことですか?
だがこの老婆はちょっと異常と思われるくらい仕事が早いのだ、と咲は思い出す。
咲も何度かこの屋敷にはお世話になっているので知っているのだが、まるで何かの術でも使っているかのような素早さで、立ち寄った隊士達をもてなしてくれるのだ。
だから初めてこの屋敷を訪れた時、善逸は ひさ のことを「妖怪」と呼び、炭治郎からゲンコツを食らったらしい。
「いただきます」
一同で手を合わせて食事を始める。
ガツガツガツ、と勢いよく手づかみで食べ始める伊之助に、「お前、いい加減に箸使えよなぁ」と眉を寄せる善逸。
「そんなにお腹が減っているのなら、これも食べるといい」と、自身の煮物の椀を笑顔で差し出す炭治郎。
小さな口で上品に食事を進めるしのぶ。
同じく小さな口で、だがしかしこちらは盛大に口の周りを汚しながら食べる義勇。
そんな中、咲も味噌汁の入った椀を手に取った。
さつまいもの味噌汁であった。
香り立つ味噌汁の中に、黄金色の具がチラリと顔をしている。
ゴロゴロと大きく切ってあるさつまいもを口に含むと、優しい甘さがいっぱいに広がって、咲はつい嬉しくなって勢い良く、
「わっしょい!」
と叫んでしまった。
「え???!!」
一斉に集まる、一同からの視線。
「わっしょいわっしょ…あっ!」
嬉しそうにさつまいもを頬張っていた咲だったが、みんなからの視線に気づくと、箸で掴んでいたさつまいもをぽちゃんと椀の中に落とした。
「あっ、ば」
かーっ、と両頬が熱くなっていくのを感じるが、恥ずかしさで何も言えない。
「あははは!咲、煉獄さんと同じこと言ってるな!」
一瞬時が止まったようになったその場を、炭治郎の明るい笑い声が壊してくれた。
「す、すみませんっ、つい癖で…!!」
真っ赤な顔をして恐縮しきりで謝る咲に、全員がこの上なく優しい視線を送ったのだった。