第13章 小刀と拳銃
入浴後は他の隠達と共に夕食をとり、途中から別行動であった後藤とも合流した。
「お前ら、何だか肌がピカピカしてんな」
「さっき温泉に入ってきたからかもしれません。本当にこの里の温泉は良い湯ですね」
「かぁーっ、若者どもめ。俺くらいのオッサンになるとなぁ、温泉に入ろうがもうそんな肌の輝きは取り戻せねぇんだよ」
ケッと少しふてくされたような顔をして後藤は言ったが、別に怒っている訳ではなさそうなので炭治郎も咲もニコニコと笑った。
食後には、禰豆子が遊んでいた折り紙で、無一郎が死ぬほど飛ぶ飛行機を作ってくれて、まるで童心に帰ったようにみんなで中庭で飛ばして遊んだ。
お腹が苦しくなるくらい笑った後、縁側に腰掛けて休憩している時に、咲が、先日善逸に助けてもらった時のことを話した。
無一郎は興味深そうに耳を傾けていて、
「なにそれ、面白いね。僕も見てみたいなぁ」
と、屈託のない笑顔を浮かべた。
「へぇ、あの黄色くてうるさい奴がねぇ」
感心したように後藤も言う。
その隣で炭治郎は、まるで自分の家族が褒められたような顔をして、眉を大きく下げながらニッコリと笑っていた。
「善逸は強い奴なんです。だから俺はいつも頼りにしているんだ」
その瞳は優しく細められ、善逸に対する信頼や愛情が溢れているのが目に見えるようだった。
夜更かしもほどほどに、みんなで布団を並べて川の字になって眠る。
普段だったら任務に当たっているような時刻に、こんなに満ち足りた気持ちで温かい布団にもぐり込めるなんて。
誰も口にしなかったが、皆が胸の中でこの幸せをかみしめていた。
信じられないくらい穏やかな一日だった。
普段の過酷な任務のことはひとまず忘れて、みんな年相応の子どもの顔に戻ってぐっすりと眠ったのだった。