第11章 倒したのお前やで
咲達が食事の準備をしている間に善逸は井戸で体を拭いてきたらしく、先ほどと比べると幾分さっぱりとした表情をして座敷に正座していた。
運び終えた料理を前にして、家長である宇髄が両手を合わせる。
「いただきます」
「いただきまーす!」
それに続くようにして一同も挨拶をして、夕食を取り始めた。
「この鮎の塩焼き、火加減が絶妙で美味しいですね」
咲がそう言うと、須磨がニッコニコとこぼれ落ちそうな笑顔を浮かべて乗り出してくる。
「そうでしょお?私が焼いたのよ!でもね、それ釣ったのはまきをさんなの!まきをさん、魚釣りすごく上手いのよ!」
無邪気な須磨の言葉に、まきをが少し頬を染めながらもしかめっ面をしてみせる。
「須磨!余計なこと言ってると喉に詰まらせるよ!」
「えェ~!もうまきをさんったら照れ屋さんなんだから」
「ほらほら二人共、お食事中よ。もう少し静かにね」
三人の中で長女的なポジションにいる雛鶴が、困ったように眉を下げながらもやんわりと笑顔で二人を諌める。
「うん、今日の飯も派手にうめェな。お前ら、ありがとうな!」
モリモリと食事を頬張りながら宇髄が言うと、三人の嫁達は一斉に笑顔になり、その白くて滑らかな頬を赤く染めた。
その光景を見ていると、咲はえも言われぬ幸福な気持ちになるのだった。