第1章 稀血の子
私は裸足のまま、暗い庭を必死で走っていた。
「…ひゅっ…ひっ……」
喘ぐように息をするが、喉が締め付けられたように細くなってしまって、上手く空気が吸えない。
庭に撒かれた小石がジャリジャリと足の裏に突き刺さって、まるで地獄の剣山に刺されているように痛む。
背後から迫ってくるのは、今までに見たこともないような異形の者。
粗末な着物を身にまとい、一見すると普通の人間のように見えるその姿。
でも両の目は異常なほどに血走っていて、ニタリと歪んだ口元からは犬歯と言うには大きすぎる二本の牙が覗いていた。
あれはまるで……まるで…、鬼だ。