第7章 不死川は…おはぎが好きなのか…
咲が家族の仇である鬼を追っていることは知っている。
その悲願を達成するまでは浮ついたことなど言えない、と思っている杏寿郎の気持ちも何となく察している。
だが、だからこそだ。
こんないつ死ぬともしれない生活をしているからこそ、いっそ早々と気持ちを打ち明けてしまった方がいいと思っている。
鬼を倒せたとしても、気持ちを伝えられないままどちらかに何かがあったのでは意味がなくなってしまう。
だから、ちょっとハッパをかけてみたのだ。
「む……俺は……」
”妹”ではなく”女性”として好いている、という言葉が喉の奥から出かかったが、杏寿郎はそれを飲み込んだ。
「俺も咲のことを大切に思っている!!」
ははは、と普段通りの様子を装ってみたものの、宇髄には全てお見通しのようだった。
宇髄がガシッとその丸太のように太い腕を回してきて、杏寿郎にしか聞こえないくらいに声を落としてヒソヒソと言った。
「ま、何かあったらこの宇髄様に相談しろや。何てったって俺は妻帯者だからな。しかも三人の」
「うむ!かたじけない!」
宇髄の優しい言葉に、杏寿郎は嬉しくなって、トサカの様な髪をピョコピョコと揺らしながら頷いたのだった。