第6章 はっけよいのこった
そんな事を考えながら、焼き芋を握り締めてボーッと物思いにふけっている杏寿郎のことを、咲が不思議そうな顔をして覗き込んだ。
「杏寿郎さん?どうかされましたか?」
大きな瞳に見つめられて、杏寿郎はハッとする。
「いや、何でもない!さぁ食べようか!」
ホカホカと湯気を立てている焼き芋を大きく頬張ると、口の中いっぱいに優しい甘さが広がった。
「うむ、うまい!わっしょいっ!」
杏寿郎がいつものように叫ぶと、道行く人達が何事だろうかと驚いてチラチラと視線を送ってきた。
杏寿郎は本当に、どこにいても何をしていても人目を引く。
咲は隣に座りながら、その視線を共に受けることに若干の恥ずかしさを感じたが、嬉しそうに焼き芋を食べている杏寿郎の横顔を見ると、先ほどの相撲観戦の時と同じように、そんなことどうでも良くなってくるのだった。
「わっしょい!」
咲も一緒に声を上げた。
(杏寿郎さんと一緒にいると、どうしてこんなに楽しくて、心が安らぐのだろう)
咲は、もぐもぐと焼き芋を頬張っている杏寿郎の顔を見上げた。
「杏寿郎さん、今日は誘ってくださってありがとうございました。とても楽しかったです!」
ニコッと花の咲いたように笑った咲に、杏寿郎も満足そうに頷いた。
「うむ!また来よう!」
そう言って杏寿郎は、咲の小さな頭をポンポンと優しく撫でたのだった。