第1章 異変
「なんて趣のある……」
オンボロ寮と言う名に相応しく、外観からして廃墟のような建物の前に私達は立っている。
「これでも頑張って掃除して、中は綺麗になってる……はずなんだ」
「オレ様も手伝ったんだから、当然綺麗に決まってるんだゾ」
ユウさんは苦笑いしながらその扉を開け、中に入るよう促す。
私は恐る恐る中へと足を踏み入れた。
外見と異なり、屋内は確かにグリムさんの言う通り、とても清潔に保たれている。
細かいところまで、とても綺麗だ。
「大しておもてなしもできないけど、ゆっくりしていてくださいね」
ユウさんがそう言い、奥のキッチンの方へと消えていく。
それを見送った私は、談話室のソファに腰掛ける。すると……。
「おやぁ? 初めて見るお客さんだね」
「ユウとグリムの友達かい?」
「それにしては、見たことの無い制服を着ているね?」
どこからともなく、声が聞こえてきたのだ。
何事かとユウさんを呼びに行こうと立ち上がろうとすると、目の前に白いふわふわした3つのかたまりが。
いや、これは……。
「ゆ、幽霊!?」
驚きそのままひっくり返りそうになるが、どうにか踏ん張った。
急いでユウさんの方へと向かおうとするが、当の本人は穏やかな笑顔でこちらに戻ってきた。
手には暖かそうに湯気を上げるカップが2つ。
「大丈夫ですよ、あんずさん。……ゴーストたち、ただいま。この人はあんずさんって言って、僕と同じく異世界から来た人なんだ。しばらくこの寮で一緒に暮らしてもらうことになったから、よろしくね」
「よ、よろしくお願いします」
ユウさんが紹介してくれた後に続き、恐る恐る私もお辞儀をする。
すると彼らは嬉しそうに笑った。
「驚かせてごめんね、あまり見かけない人が来るとつい気になってしまってね」
「でも、2人の友達ってことならおれたちは大歓迎だ」
「ますます賑やかになって嬉しいねぇ、ヒヒヒ」
楽しそうにする3人を見ていたら、だんだん私も緊張がほぐれ、気づくと笑顔になっていた。