• テキストサイズ

【ハリポタ】シリドラ劇場

第9章 ※亡くした者


 小雨がさらさらと窓をたたく午後。クリスはフレッドから連絡を受けたと言って、一人で『W・W・W』へ行ってしまった。
 危ないからドラコが一緒に行くと伝えたが、クリスとフレッド両者から断られた。
 当然だ、クリスと一緒にいるといっても、他の者はにとってはまだ『例のあの人』側の人間だと思っているものも少なくない。

 それにしても、帰ってくるのが遅い。ドラコが本を読みつつそわそわ心配していると、パタンと戸口が開いた。クリスかと思って素早く確認すると、戸口に立っていたのはクリスではなくシリウスだった。

「チッ……何だ、お前か」
「初手から舌打ちとは、随分良い家柄の出身のようだな」

 上から目線で笑うシリウスに、ドラコは睨みながらまたしても小さく舌打ちをした。その音を聞いて、シリウスはふと懐かしさを感じた。

『――チッ、マグレかぶれが……』

 ――あぁ、そうだった。
 あいつも……レギュラスも同じように、俺に対してよく蔑んだ目で舌打ちをしていた。

 愚かな長男に代わり、両親の期待を一身に受け育ったアイツは、完璧なる「純血主義」となった。
 そしてその結果――どんな悲惨な最期を迎えたかは語るべくもない。

 そう思いながら、ふとドラコの顔を盗み見る。
 髪の色こそ違うが、色素の薄い顔色も、少し細い顔の輪郭も、こうして見るとよく雰囲気が似ている。
 それらを繁々と眺めてると、ドラコが3度目の舌打ちと共に噛みついてきた。

「一体なんだ?何か僕に用でもあるのか?」
「いや……その蔑んだ瞳を見て懐かしく思っただけだ」
「……懐かしい?蔑みの瞳が?」

 言っている意味が分からないと、怪訝な顔をしながらドラコはシリウスを無視し、またに本に視線を戻した。

 その横顔を眺めながら、シリウスは若くして亡くした弟とよく似たブルーグレイの瞳に想いを重ねた。
 そして今度こそは絶対に――、とシリウスの胸に、小さいが確かな火が灯ったのだった。
/ 24ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp