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 醒めない夢を 【短編集】【R18あり】

第5章 薔薇を塗ろう② トレイ・クローバー


「やっぱりトレイ先輩、ドゥードゥル・スート使ってたな」

重々しい口調でデュースはエースにそう言う。

「もしかして、がおかしくなったのって全部…トレイ先輩と付き合いだしてからじゃないか?」

エースは口にした瞬間に、頭の中でバラバラになっていたピースがはまっていくような開放感を感じた。
ドゥードゥル・スートと吐き出されたドリア。
そしてあの目…
茂みの中に隠れていたエースとデュースに向けられた敵意剥き出しの獣の瞳。
いや、獣なんて可愛いものでもないのかもしれない。

「こんな所で2人ともどうしたの?」

ひょっこりとが顔を出した。
つぶらな瞳に人懐こい性格。
華奢な体と透き通る白い肌。
まさにの存在はこのヴィランズ達が集まる世界では1輪の白い薔薇のような存在だった。

「お前、トレイ先輩と別れたほうがいいんじゃねぇの」

「おいっ、エース…!」

エースは飄々とした顔でに言い放つ。
は一瞬目を丸くしたが、悲しそうに唇を噛み締めて、視線を逸らした。

「…ううん、それは出来ない」

予想通りの返事だった。

「何でだ?お前はトレイ先輩におかしくされてる。食堂でドリアを吐き出したのも、トレイ先輩のユニーク魔法のせいだって、知ってんのか?」

つい怒りがフツフツと込み上げて、荒々しくにエースは言いつけた。
はまた目を見開いて、驚いた表情を見せたが、力なく微笑んだ。

「…私、ほんとは帰るつもりだったの。2ヶ月前にね。でも、帰ったときに、トレイ先輩のことが急に過ぎって戻ってきて今ここにいるの。確かにトレイ先輩のことは好き。でも、それだけじゃないの…私はここにいないと…」

ゆっくりと紡がれる糸のようには小さい声でそう呟いた。

「でも…」

エースは納得がいっていない様子で、俯くの肩に手を置こうとした瞬間、誰かにその手を払い除けられた。
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