第2章 修業の森
会話が途切れたところでサスケは何やら考え込んでから、顔を上げた。
「場所に困ってるなら…俺のところで修業するか?」
里に来たばかりの者に言い過ぎたと思ったのか、一変して気遣うようなその提案に驚かされ一瞬シズクは言葉に詰まる。サスケは今の言い回しが不十分なことに気付き、少し慌てて付け足した。
「一緒に、って訳じゃない。場所を提供してやるだけだ」
プイと横を向いてしまった彼の態度にシズクは確信する。
この人は、優しくないんじゃない。不器用なだけなんだ…
「ありがとう。名前、教えてくれる?あたしはシズク」
「俺はサスケだ」
クールな雰囲気からは想像もつかない彼の優しい言葉に、シズクは微笑んで申し出を受けた。
買い物を済ませた後、場所を案内するサスケについていく。彼は黙ったままひたすらに少し先を進む。その後ろで、彼の顔立ちや雰囲気を思い起こしながらシズクは引っかかりを感じていた。
……似ている。どう考えても、あの人に…
そう思う度、胸がざわざわと落ち着かなくなった。
そして、街の中心から離れた修業の森に到着するとサスケが声を掛けてきた。
「ここなら大丈夫そうか?」
周りにはほとんど何もないが、広さだけは充分にある。伸び伸びと動けそうだ。
「うん。ありがとう」
シズクの承諾にほっとしたように彼は安堵の表情を見せる。喋り方はぶっきらぼうだが、対応はとても真面目で律儀だ。
「いつも一人で修業してるの?」
「…ああ」
何気ない質問だったが、あまり触れられたくない内容なのかサスケは顔を背ける。彼の心情を察してシズクはそれ以上の追及をやめた。
「あたしと同じだね」
それだけ告げて、自分も修業をするため森の奥へ移動を始めた。サスケはそんなシズクの姿をひとしきり見送った後、同じく修業を開始する。そうして、それぞれが隣り合った場所で思い思いの時間を過ごしていった。
.