第16章 アジト
どういう意図か分からないが、その情報をくれたのはイタチだった。彼はシズクがサスケを庇ったあの時のやり取りで何か感じ取ったに違いない。
しかしサスケに関しては任務外だったし、一度話を拒否されている過去もある。こちらから話題にするのは憚られ、何となく気まずいまま時間だけが過ぎていった。
それにイタチと言えば他にも不可思議な点がある。
木ノ葉から逃亡後、途中休息を取った際に、九尾捕獲時の失態について鬼鮫に責められてしまった。シズクが迷い、もたつかなければ事はスムーズに運んだ筈である。自来也が助けに来てしまい、術から逃れる為にイタチは天照まで使う羽目になった。だが彼はそれには何故か取り合わず、シズクの不手際については不問としていた。
イタチは、間違った時はちゃんと叱って正解へ導いてくれる。もしかして、見放されてしまったのか?反抗したことでシズクは彼に嫌われることが怖かった。
「捕獲には失敗しましたが…どちらにしろ、今回は九尾の様子見だったんでしょう?」
鬼鮫は最初こそ不満そうな様子だったが、過ぎた事に深く言及する気はないようだった。さっさと九尾の話題に切り替え、思い出したように続ける。
「九尾の封印は最後だと…リーダーが言っていた気がするんですが」
「そうだ。それに今すぐ封印は出来ない。色々と準備が要る」
イタチの返答に、鬼鮫はやれやれと面倒そうな反応を示した。
「また暫くは資金と情報集めというところですか」
資金、情報…集めて何をするつもりなのか。暁が何をしようとしているのかさっぱり見当がつかなかった。
それでも、シズクは暁の一員であるイタチの命令通りに動くしかない。例えその内容が暁の指示だとしても。そうすることが、イタチと共にいられる唯一の方法だからだ。
木ノ葉を離れた今、サスケに関する情報が不足している。里抜けし大蛇丸の元へ向かった彼は決して味方とは言えず、むしろこの先敵対する可能性のほうが断然高い。そんな相手のことが気にならないはずがない…
…違う、そういうんじゃない……ただ、あたしが会いたいだけだ。