第10章 死の森
「お前が抜け出すことは予想してた」
手を休めずにセツナが落ち着いた声で静かに語り掛けてきた。
「でも来るのが少し遅かったな…悪い」
「違うよ…単独行動した、あたしが…悪い…の」
謝る彼をシズクはすぐに制した。これは自分のミスだ。冷静な判断も仲間への相談もなく勝手に行動したのだから。
その後シズクはサクラに持っていた飲み水と薬を分け与え、セツナと共にその場をあとにした。
「おかえり。まずは怪我をきちんと手当てしよう。作戦はそれからね」
ヒタキの元へ戻って来ると彼は寝床とご飯の支度をしてくれていて、それ以上は何も言わなかった。
予想していたと言ってはいたが、チームメイトが無断で抜け出す事態に動揺した様子もない二人を見ていると、やはり場慣れしていると感じた。だが今はただ、力のある二人が味方で良かったとつくづく思う。
…迷惑かけてしまったけど…
シズクは、反省はしているが後悔はなかった。あのまま、あの三人を放っておくなど出来る訳がなかったからだ。
「セツナ…ありがと…助けに、来てくれて」
整えられた寝床へゆっくりと寝かせてくれるセツナに礼を言う。彼がすぐに駆け付けてくれなかったら、どうなっていたか知れない。
「……ばか。当たり前だろ」
彼は照れたように横を向いて短く応えた。すぐに真剣な顔に戻り心配そうに問い掛けてくる。
「…痛むか?」
「…少し」
そこでヒタキのやや意地悪そうな声が降ってきた。
「無理に動くと発熱すると思うから、しばらく寝てろよ。にがーい薬も用意したからな」
ニヤリとする彼に抗えず、シズクは弱々しく承諾した。薄くぼんやりとしていく意識のなかで、二人に目一杯感謝しながら。
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