第7章 慕情
訳の分からない気合いが入ったセツナを引きずりながら連れて行くヒタキ。二人の姿が消えると、彼女は肩の荷が下りたようにひと息ついた。そのやり取りを黙って見つめていたサスケは小さく呟く。
「……あいつはかなりの馬鹿だけどお前もやるな」
奴の扱いを心得ているシズクに感心する反面、そんな風に近寄って欲しくないと思えた。
「セツナって解りやすいからね」
指摘を素直に受けお茶目に笑うシズク。そしてそのままの明るい口調で唐突に切り出した。
「という訳であたし、もうここには来られないかも」
その言葉にサスケは一瞬表情を曇らせる。
「あの調子でセツナが騒ぐから…ついて来られたらサスケの邪魔になっちゃう」
理由を説明するシズクはわざと明るく話しているように見えた。その様子にサスケの胸に淋しさが広がっていく。
「これからセツナに教わろうかなって。同じ班だし」
「……さっきの、その場しのぎの台詞じゃなかったのか」
「うん」
「お前…ホントにあいつに手取り足取り教わる気か?」
思わず余計な心配事が口をついて出てしまった。
「なにそれ、サスケやらしー」
「ば…ばか、なんで俺がやらしいんだよ」
シズクのいたずらな一言に焦りまくり赤くなる。からかわれてぶすっとしていると、彼女が笑うのをやめて静かに話し出した。
「あたし…任務が終わって家に帰るでしょ、そうすると一人で…それが時々すごく淋しくなっちゃって。だから、ここに来るのが楽しかったの」
先程までとは一変した彼女の雰囲気から淋しさが伝わってくる。やはりさっきは強がっていたのだろう。
「また…来てもいい?」
孤独の辛さが痛い程分かるサスケだが、込み上げる感情を抑えてクールに答えた。
「ああ、ここは俺の森じゃない。俺に断る必要はな…」
「違うの」