第5章 芽吹く想い
「んだよー、おめーらいい空気作ってんじゃねーぞ。シズク、そいつから離れろ」
傲慢な態度で命令してくる彼にシズクはむっとする。
「そんなのあたしの勝手でしょ」
「む、なにぃ?うちはサスケ!テメーがそんな汚い手を使うんならこっちにも考えがあるぞ」
「…俺がいつ汚い手を使ったんだ」
興奮するセツナとは対照的に、半ば呆れ気味のサスケがため息混じりに告げた。
「とぼけんのもいい加減にしろ!シズクをたぶらかしやがって」
「そっちこそいい加減にしてくれ。妙な言いがかりつけるな」
両者の間に火花が飛び散る。互いにムッとした表情で静かな怒りを込めたやり取りが交わされた。
「てめー…オレと勝負しろ。決着つけてやる」
「望むところだ…」
「ちょっ…なんでそうなるの!?セツナ、これから一緒にご飯食べに行くんでしょ」
徐々に白熱していく二人の口論にシズクは慌てて割って入った。その呼び掛けにセツナは我に返ったようだ。
「…そうだけどよ、コイツぜってームカつくぞ!」
「わかったから、ご飯食べてこよ。ね」
シズクが立ち上がり傍へ近付くとようやく彼は怒りを抑えた。シズクの肩に腕を回してサスケに対し捨て台詞を吐く。
「命拾いしたな。次までにとっとけよ」
「…シズク」
一瞬、サスケの少し切羽詰まったような声にどきっとしてしまう。振り向こうとするが、肩を抱かれた状態のシズクはセツナに強引に連れられてしまっていた。彼の表情が見えないままその場をあとにする。
呼び戻そうとするみたいに聞こえたのは…あたしの勘違いだよね。
サスケに名前を呼ばれると何故だか心臓の鼓動が早まる。彼の声に胸が熱い灯をともす感覚をシズクは心の内に抱いていた。
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