第9章 見たくない真実との向き合い方
その日は
早朝からのロケバスでの移動で
体も心もけっこうヘトヘトで
昼休憩になって
みんながいそいそと
お弁当に群がる中
1人ぼんやりと
ロケバスの窓から外の景色を
見つめていた…
そんな俺の隣に
いつの間にか弁当を抱えた
丸が座っていて
「はい、大倉の分の弁当も
持ってきてあげたで?」
なんて…
頼みもしてないのに
俺の膝の上にお弁当を置く
そんな丸のありがた迷惑な
お節介を前に
「あの…俺あんまり
お腹すいてないわ…」
そう言って
膝の上のお弁当を丸に返そうと
下を向くと
俺の膝の上には
明らかにロケ弁とは違う
家庭的なお弁当箱が乗っかっていて
「丸…これ何?」
そう不思議そうに聞いた俺に
「見たら分かるやろ?
大倉のために作った特製弁当やで?
このためにわざわざ早起きしたんやから
一口でいいから食べてや!!!」
なんて真顔で俺を見つめてくる…汗
そんな少々気持ちが重たすぎる丸を
横目に一つ小さくため息を吐き出して
「分かりました…笑
食べればええんやろ、食べれば…」
なんて仕方なくお弁当箱を開くと
そこには予想外に美味しいそうな
おかずやごはんが並んでて
その中から一つ唐揚げを箸で掴み
口の中に放り込んで噛み締めた瞬間
なぜだかどうしようもなく
瞼が熱くなって
ぼろぼろと涙が溢れ出した…