第8章 雨宿りはお好き?
月もまだ出ぬ程の宵闇。
庭の池では鯉が優美にたなびく一方で、2人は風も入り込まぬ程閉め切られた部屋の中に居た。
「おえ、ぅう……ごほっ、かはっ、」
「無理なさらないでください、杏寿郎さん。」
苦しそうに嘔吐く男を傍に座る女が介抱する。
杏寿郎と呼ばれた男は、以前の逞しい体躯が嘘のように痩せ細り、腹には包帯が厚く巻かれ、左目には眼帯を付けていた。
「舞、すまない…いつも、、、。」
「気にしないでください。杏寿郎さんの傷が良くなるのが1番ですから」
儚げに笑う彼女の目元には、隈が出来ていた。
ただ、その笑顔は愛と優しさに溢れた心の底からの笑顔であった……。。
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