第18章 そしてWCは伝説となる
涼君のパーフェクトコピーによって止められた時とは違い、今回は完全に攻略されたのだ。そしてテツ君はメンバーチェンジと共にベンチに帰って行く。最悪なタイミングだった。これじゃあまるでやられたから引っ込んだように見えてしまう。あの時感じた違和感の正体はこれだったんだ。味方の士気に響かなければいいんだけど。
だけどその心配は必要なかった。大我君がドライブを最警戒していたはずのダブルチームの真ん中をドライブで抜いたのだ。
花帆「火神君、凄い…」
藍「私もここまでの成長は予測していなかったけど、頼もしいと同時にそのあまりに底知れない火神君が少し、怖い」
藍の言いたい事は分かる。だけどそれをチーム内で感じてしまったらと考えた方が、あたしはもっと怖い。そしてそのまま誠凛の猛追は続き、第2Q終了時には同点となり試合を振り出しに戻した。インターバル中、あたしの中には底知れぬ不安が残っていた。それに気付いたお兄ちゃんに心配される。
『きっと誠凛は涼君がいない間に出来るだけリードをつける作戦でくるはず』
水希「それの何が心配なんだよ?」
『追われる側のプレッシャーは追う側の比じゃないくらいあるの。と同時に誠凛は今まで追われる側になった事はない。だからその恐怖を知らないの』
それに心配なのはそれだけじゃない。流れが変わった時、はたして誠凛は海常の勢いに飲まれずにすむのか。暗くなった雰囲気を感じてか、宗君が明るい声で話す。
宗助「けど、朱音の話を聞いていた黄瀬のイメージとはだいぶ違うな。もっとバカなのかと思ってたけど」
「「「「「黄瀬君(ちん)はバカだよ」」」」」
宗助「………」
見事に誠凛女バスとあっ君の声が揃って、さすがの宗君も同情したのか何も言えなかったようだ。あたしは携帯を取り出し、誠凛で会ったあの日に贈られてきたメールと一緒に添付してあった写真を見る。
"これが主将の笠松先輩ッス!"
その時の写真には、笑顔に涼君と機嫌の悪そうな笠松さんが映っていた。と同時に、その直後にかかってきた電話での話を思い出していた。