第18章 そしてWCは伝説となる
ハーフタイムまでは同点だったが、今では14点差となった。
宗助「シュートもドリブルもパスも、あらゆる動作に入った瞬間にカットされてる…まじで一歩も動けてねぇ!」
『トリプルスレットって言って、バスケにおける最も基本となる姿勢がある。それはシュート、パス、ドリブルの全ての動作に備えた状態でもあり、逆に言えばどの動作も必ずそこから開始する。バスケット選手はどんなに速く動いていても、次の動作の直前に一瞬その姿勢に入っているの』
兄「赤司の未来を視る眼はその一瞬さえも見逃さないってわけか」
征ちゃんはドリブルで秀徳2人のDFに対し、アンクルブレイクを引き起こす。
花帆「どうなってんの、あれ…」
梓「あれはアンクルブレイクって言って、高い技術を持つ高速ドリブラーが相手の足を崩し転ばせる事が出来ます。朱音ちゃんも出来るよね。私には無理だったけど…」
宗助「何で転ぶんだよ」
兄「相手の軸足に重心が乗った瞬間に切り返した時にのみ起こせるんだよ。未来が見える赤司の眼は、それを容易く引き起こせるのにも納得だ」
「天帝の眼(エンペラーアイ)、あの眼がある限り赤ちんが負ける事は、少なくとも俺には考えらんないな」
水希「まじかよ…けどなんたらアイがない朱音でも出来るなんて、相変わらずすげーな」
茉実「朱音はそれだけ努力してるの」
征ちゃんは再び真ちゃんを抜き、これで20点差になった。残り6分。ここから洛山相手に追い付くのはかなりきつい。会場も洛山の勝利が確定した空気になっていた。だが秀徳は、特に真ちゃんと高尾君の表情が変わった。
辰也「これは…決まった、か?」
『いいえ、まだ勝負は分かりません。秀徳はまだ諦めていませんよ。彼は何かしようとしています』
兄「確かにここから追い上げるなら緑間の3Pは不可欠だが、赤司がついている以上どうやったって無理なんじゃ…」
凜子「10秒きった!やっぱ攻めあぐねてる…」
藍「それもあるけど、それ以上におそらくこれからトライする事は相当リスキーなんじゃないかな」
優希「残り時間と点差を考えればもはや1つのミスが命取りになる。迷いや不安はミスに繋がるわ」
捺美「つまり動くのは覚悟を決めた時…」
隣から宗君の生唾を飲む音が聞こえ、場面は動いた。