第18章 そしてWCは伝説となる
「…時々ひどく不安になる。中学の時は一緒に戦った仲間だった。だが高校に進学し全員がバラバラになり、僕達は敵同士になった。それは確かに僕が中学の最後、つまり全中が終わり卒業するまでに望んだ事だった。だが僕はあいつらと確かに繋がっていたあの時を消したりしたくないんだ」
『…あたしは鈴城の皆とまだ一緒にプレイしてるからよく分からないけど、似たような境遇なら綾がいる。綾とは昔の仲間であり、今はライバルになった。けどそれだけでしょ?過去は過去、今は今。それは絶対に変化しない事だよ。過去の思いでは消える事もなければ途絶える事もない。それは皆分かってるよ』
「…だがもしこう思っているのが僕だけだったとしたら…」
『征ちゃんは皆の事、信じられないの?大丈夫、あの頃皆は1つだった。征ちゃんがバスケにおいて敵である事を望むなら、真ちゃんだって皆だって分かってくれるよ。逆に征ちゃんが過去を守りたくて手を抜いてしまった時の方が、壊れる原因になるよ』
征ちゃん達が過去にどんな誓いをしたのかは分からない。けど皆は皆の事をきちんと分かっている。それだけで十分なのだ。
「…そうだな。明日は全力で真太郎とやることにするよ。ただしその場面にあたれば、だ。僕がやる事はいつもと変わらない」
『それでこそ赤司征十郎だよ』
あたし達は互いに少し笑うと、顔を見合わせるため征ちゃんが寝返りを打った。
「朱音がいてくれて良かった。手、繋いで寝てもいいか」
『うん。あたしも言おうと思ってた』
「『おやすみ』」
あたし達はゆっくりと手を繋ぎ、瞼を閉じた。征ちゃんの匂いがするこの空間は、いとも簡単にあたしを深い眠りの世界へと引き込んだ。