第18章 そしてWCは伝説となる
「はっ!終わったぞ!僕は耐えた!この勝負、僕の勝ちだ」
「「ぐっ…」」
征ちゃんはそれはもう嬉しそうにガッツポーズまでしている。今日のこの出来事は、征ちゃんの新しい意外な一面が見れたということで良しとする事に決めた。実を言えば少し可愛かったし。
征ちゃんは楽しそうにアルバムをめくり、その時の表情は初めて見るモノばかりだった。そして一通りじっくり見る事約1時間。今度は缶をごそごそ漁りだし、慎重に3枚を選んだ。お兄ちゃんとてっちゃんは終始悔しそうにしていたけど。
「僕が勝負に負けるなんてあり得ない。ありがたく貰っておくよ」
『はぁ…それあたしのなんだけど。もういいや、そろそろ2階に上がろうか。てっちゃん、また明日ね。おやすみ。お兄ちゃんはまた後で』
ルンルンの征ちゃんの背中を押すようにして階段を昇る。部屋に着くと征ちゃんはもう1度写真を見直し、大切そうにバッグにしまった。その間に携帯を見るともの凄い数の新着メールが届いていた。征ちゃん以外のキセキの皆、テツ君に大我君、さつきに綾、茉実達からのメールだった。内容のほとんどが明日頑張れ、頑張ろうとのモノ。そしてある人物からのメールが約30通あった。市谷さんだ。内容は今何してるの?とか、あたしの趣味を聞いたりというモノばかりだった。あたしは少し顔を引きつらせると、静かに携帯をしまった。すると後ろから征ちゃんに抱きしめられた。
『どうしたの?今日の征ちゃん、征ちゃんじゃないみたい』
「…幻滅したか?」
『しないよ。だって征ちゃんは征ちゃんだもん。それに可愛い征ちゃんも見れた事だしね』
征ちゃんはより強く抱きしめた。
「僕は情けなくて仕方ないよ。実の兄と兄みたいな存在である男に対して嫉妬し、焦ってしまうなんて。朱音を取られる気がした」
『何言ってんの。征ちゃんがお父さんに言ってくれた言葉全部が凄く嬉しかったよ。そこまで考えてくれてたなんてさ」
すると征ちゃんは一度あたしを離し、今度は頬にキスをした。