第18章 そしてWCは伝説となる
『大ちゃん』
「朱音か。悪ィ、後にしてくれるか」
『灰崎の所に行くんでしょ。あたしも連れてって』
「…なるほどな、朱音も灰崎に会ってたのか。だったら尚更連れてくわけにはいかねーな。その首、あいつにやられたのか」
大ちゃんは絆創膏が貼ってある箇所と同じ場所の自分の首を触る。あたしは何も言えずその場所を手で隠した。
「安心しろ。俺がもう2度と朱音に近づけさせねぇようにするからよ。だから今は帰ってくれ」
『…うん。気を付けてね、大ちゃん』
あたしは大ちゃんの背中を見守る事しか出来なかった。そして見えなくなると元の場所に戻った。そして荷物を持ち、皆に声をかける。
『涼君も勝った事だし、あたしは茉実達の所に行きます。試合も見ておきたいですし』
「なら神守さん達の元まで僕も行きます」
『?何か用事でもあるの?』
「用事というわけではありません。ただ赤司君からメールで一言、朱音さんを1人にさせないでくれと言われましたので。さっきはまだ見ていなかったので、仕方なかったと思うしかありませんが。何かあったんですか?」
『ありがとう、テツ君。何もないよ』
「何もなければ赤司君がこんな事を僕に頼んだりしません。何があったかは聞きません。けど…朱音さんが黄瀬君の試合が見たいと言った事と、彼が出て来た事から考えると何となく予想できます。だから僕も一緒に行きます」
『うん、分かった。ありがとう』
降旗「え、俺らはわかんねーけど…」
リコ「いいのよ、降旗君。今日はこれで解散にするわ。黒子君、朱音ちゃんの事よろしくね」
リコさんは皆にきちんと体を休めておく事を念押しして、1人で先に帰ってしまった。そしてあたしとテツ君も席を立ち、別の体育館へ向かった。相変わらずテツ君は自分からは何も話そうとはしない。あたしが適当に出した話題を丁寧に広げてくれる。だからテツ君との会話は好きだし、時間も忘れる。気付いた時にはもう体育館に着いていた。