第18章 そしてWCは伝説となる
「朱音!何か手はねーのかよ!?」
『…キャリアこそ浅いけど、それでも一度見れば技を習得出来る涼君は、そのストックももう相当な量があると思うよ。けどその中で灰崎に通用するとなればそう多くはない。しかも使った先から灰崎に奪われ使用不可能になる。今まで慎重にその限られた中から選んで戦ってきたけど、いよいよそのストックが尽きだした。その上もっと大きい…ううん、大きすぎる問題が1つ…』
リコ「過剰練習(オーバーワーク)ね」
「オーバーワーク!?」
リコ「…多分ね。朱音ちゃんも言うんだから間違いないわ。そうよね?」
『はい』
リコ「IHの海常対桐皇戦、あの戦いで体を痛めたのが青峰君だけどは思えないわ。おそらく黄瀬君も…そして完治せずにハードな練習を積んでしまったのよ」
「そんな…それでも…アイツが負けるわけねぇ!あんなクソヤローに…約束したんだ、勝つって…次の準決勝でやるって…だからアイツは絶対…」
『大我君…テツ君?』
テツ君から出る雰囲気が変わった。中学の頃と変わらない、仲間の涼君を信じていたあの頃のように。灰崎は2連続ダンクを決める。会場からは灰崎を認める声も溢れてくる。コートの中では涼君に向かって灰崎が何かを言っている。するといきなりテツ君が立ち上がり、叫んだ。
「信じてますから…黄瀬君!」
「黒子っち…」
ザワザワしだす会場。だけど涼君の表情は一変した。
「勝つ前に言っとくけどショウゴ君さぁ…勘違いしてるよ、あの子の事とか。勝手に付き纏って彼女名乗られてうんざりしてたんスよ正直。プライド高くて話は自慢ばっか。モデルと付き合ってるってステータスが欲しかっただけなんスよ、あれは。俺が振り向いてほしい女の子はただ1人だけ。見た目だけで群がってくるバカ女のうち1人取ったくらいで調子のってんじゃねーよ」
涼君は自身のゴールの近くからシュートを撃った。まさにあれはキセキの世代、真ちゃんの3P。真ちゃんと同じようにリングに掠る事もなく、シュートが決まった。