第2章 鈴城中学校女子バスケットボール部
2年になって早数日。
体育館のギャラリー席は今まで見たことがないくらい埋まっていた。
藍「うっわー、すごい人だねぇ!どうする?朱音」
あたしとは違う色の髪をあたしと同じ高さでくくっている彼女、立花藍はあたしにドリンクを手渡して訪ねてきた。
『ありがと、藍。うーん…少しうるさいから静かにしてもらえるように頼んでみるよ』
すると藍は「さすが朱音!素敵!」といつもの台詞を言ってくる。
そんな藍に練習を少しばかり任せ、ギャラリーへ向かった。
ギャラリーに顔をだすと今まで以上に歓声が増した。
新入生「きゃーっ!朱音先輩!あの!試合見ました!ファンになりました!」
新入生「あのっ!これ差し入れです!良かったら食べてください!」
新入生ちゃんの元気の良さに圧倒されながらもコートの中にふと目が行く。すごい形相で藍が睨んでいるのが分かった。
『…はぁ。あのね、気持ちは嬉しいんだけど今は練習中だし、もう少し声を抑えてくれるとありがたいんだけど…』
困ったように笑うと何人かの生徒が倒れた。…倒れた!?
『えっ!?ちょ、大丈夫!?』
新入生「きゃーっ!朱音先輩が心配してくださってる!いいなぁ!私も気絶しなきゃ!」
何やら恐ろしい言葉を聞いたと思ったら、体育館中に笛の音が響いた。
藍「はい、ストーップ!朱音に行かせた私が間違いだった。ここは私がやるから朱音は練習に戻って!」
『え?ちょ、藍?』
不機嫌な藍に背中を押されて必要以上に幅広く長い階段に出る。溜息を吐きながらもコートに戻った。
茉実「荒れてるねぇ、藍は!」
凜子「なんで茉実が嬉しそうなの!?しっかし今の1年は恐ろしいね~。まさか朱音にあんなに積極的に話しかけるなんて」
『茉実、凜子。無駄口叩いてるってことは余裕なんだね?』
コラ!と叱ると子供の様に無邪気に笑って練習に戻っていった。本当に余裕そうだから練習メニュー増やそうかな。
汐音「相変わらず凄い人気者だね~。我らがキャプテン様は」
後ろから感じた気配に振り向けば、汐音先輩が汗を拭きながらやって来た。
『…先輩があたしに押し付けたんじゃないですか。本当は汐音先輩が主将やってたはずなのに』
汐音「こーら。まだそれを言うか。満場一致で決まったじゃない。諦めろ、主将様」