第18章 そしてWCは伝説となる
今吉さんによってテツ君の所で出来る高さのミスマッチをついてきた。しかもそのパスはテツ君の得意とするスティールが出来ないような高さのあるパス。他にもスピード、パワーの両方を持つCの若松さんや、3Pシューターの桜井君が落ち着いたプレーをする。実力に差はないと言ってしまったけれど、あたしの想像以上に桐皇は力をつけていた。桐皇はいつも通りのバスケをしているだけで、ここまでの差が出てしまったのはシュート精度やDF、リバウンドなどの1つ1つのプレイの質で上をいかれているからだった。このままではいけないと思っていた誠凛は仕掛ける。大我君第大ちゃん。
藍「ちょ!これって大丈夫なの!?」
『この場でこれは危険すぎる。負けたら一気に流れを持って行かれる。それどころか下手すれば試合も決まっちゃうよ。大我君は今、チームの命運を握っている…』
エース同士の勝負はそのままチームの勢いに直結する。相手が大ちゃんなら尚更だ。誠凛にとって行き詰っている今、返り討ちにされれば致命傷になりかねない。そのまま2人は動かなかった。
客「オイオイ、ボールもらってから全然動かねーぞ2人とも…もうすぐ5秒だぞ!?」
大我君は仕掛けるどころか伊月先輩にボールを戻した。そして外にボールが出ると誠凛はTOをとった。客席からは野次が飛ぶ。エース対決が見れると思っていた周りからは、何も出来ずに大我君が逃げてパスを出したようにしか見えなかったんだろう。
茉実「朱音、今のって…」
『茉実も分かったの?』
茉実「うん、まぁ何となくだけど」
凜子「えっ?どういう事?」
『皆には大我君が勝負を逃げたようにしか映らないだろうけど、今の数秒で2人の間に行われていた事は高次元の駆け引き。それは細かいフェイクからお互いの手を読み合った、限りなくリアルなシミュレーション。お互いが相手の力量を正確に捉えられる実力があってこそ出来る事であり、また試合中の1on1は実力だけでなく状況も大きく関係するの。それら全部を踏まえて大我君は自らの敗北を察知した。そしてターンオーバーからの失点という最悪の事態という結果を未然に防いだ。自分にとって不都合な結果を受け入れる冷静な判断は、時として勝敗以上に大きな意味を持つの。そしれそれは大我君の成長も意味する』