第12章 IH予選開始!緑と青と…
『あの構えは…だめぇーーー!』
「悪ーな、テツのパスは全部知ってる。ミスディレクションのタネもな。何よりお前のパスを一番とってきたのは誰だと思ってんだよ?…お前のパスは、通さねえよ」
伊月先輩からボールをもらい、イグナイトの構えになったテツ君の前に大ちゃんが立ちふさがる。そして大ちゃんの手によって止められた。そうだ、そもそもイグナイトはキセキの世代にしか取れなかったパス。逆に言えばキセキの世代なら取れるという事。テツ君はそれに気付かないほど興奮していたというのか…あたしがもっと早く気づいていれば…
「悲しいぜ…最後の全中からお前は全然変わってない。同じって事は成長してねえってことじゃねぇか。やっぱ結局赤司が言った通りかよ…お前のバスケじゃ、勝てねーよ」
『大ちゃん…』
征ちゃんにはこの状況が見えていたって言うの…?ううん、今はそれどころじゃない。第4Qが始まり、その変化は目に見えて分かった。
『リコさん、火神君をもう戻してください…』
リコ「え?…火神君の様子が…何で!?ほとんど完治してる上にテーピングもきちんとやった…そう簡単に悪化なんて…」
時間が止まり次第、リコさんは火神君を引っ込めた。そう、痛めた足は悪化していない。だけど無意識に痛めた足を庇いながらプレイしたことによって、今度は逆の足に極度な負担がかかってしまっていた。それに、この類の怪我ではもう残りの決勝リーグでも出すわけにはいかなかった。そして、光である火神君が抜けてからは一方的だった。残り5分強で40点差。テツ君のミスディレクションもとっくに切れている。
「…俺の勝ちだ、テツ」
「…まだ、終わってません」
「バスケに一発逆転はねぇよ。もう万に一つも…」
「可能性が0になるとすればそれは諦めた時です。どんなに無意味と思われても、自分から0にするのだけは嫌なんです。だから諦めるのだけは絶対、嫌だ!」
『テツ君…』
「…一つだけ認めてやるわ。諦めの悪さだけは」
テツ君の思いに誠凛が動いた。誰もが差を縮めるように必死に食らいつき、ベンチも声を出して精一杯応援した。それでも、誠凛は負けた。112対55という圧倒的大差で。