第12章 IH予選開始!緑と青と…
凜子「火神君はともかく、何で黒子君まで…ミスディレクションが切れたとは言いにくいけど」
『単純な話だよ。真ちゃんに勝てるのは、現状火神君とテツ君しかいない。その二人が今ここで全力で戦ったら、正邦に勝てる可能性は上がるけど、その次にやる秀徳に勝てる可能性は数段下がる。逆は言わずもがな。日向先輩はその可能性にかけたんだよ。2年生だけで正邦に勝とうとしてる。それにリベンジも含まれていると思うよ』
笠松「…なるほどな。それにお前ら1年には分からない、大事なことがもう1つある。それは…先輩の意地だよ」
先輩の意地。確かに誠凛はテツ君と火神君という1年ルーキーコンビに助けられている。
「おお~、思ったより全然食らいついてるッスね」
笠松「てかむしろ今の方がしっくりきてるけどな」
確かにテツ君と火神君は攻撃力が高いからすぐに採用したようなもの。あの2人を加えたチームは春から作った型であり、まだ発展途上。先輩方が1年間かけて作った、日向先輩の3P、水戸部先輩のフックシュートを起点として、チームOFで得点する型だ。
笠松「あともう1つ分かったのは、この型のキーマンは俺がこの前マッチアップした伊月だ。アイツには多分、もう一つ目がある。そうだろ?」
『その通りです。伊月先輩はイーグルアイを持っているそうです。頭の中で視点を瞬時に変えられる、つまりいろんな角度から物を見れるため、常にコート全体が見えているらしいです。言い換えれば、今あたしたちが見ているギャラリーからのこの景色が先輩には見えているんです』
先輩方は何かしら特技を持っている。それを1年間磨けば相当な武器になる。しかし問題発生。ボールを追いかけた小金井先輩が勢いを殺せずにベンチに突っ込んでしまった。そのままレフェリータイムに入り、次にメンバーチェンジが告げられた。
茉実「ここで黒子君か。残り5分で6点差…」
優希「正直ギリギリだね」
「それでも大丈夫ッスよ。黒子っちなら」
『テツ君の力もあるけど、慣れるならそろそろかな』
笠松「慣れる?」
『はい。古武術ってのは特殊な分だけ、クセがあります。そのクセから次の動作を予測するのは確かに難しいことですけど、先輩たちは毎日ビデオを見続け、研究してきました。それこそデッキを一つ壊しちゃうほどに』