第12章 IH予選開始!緑と青と…
凜子「あーもう!何やってんのさ、火神君~!せっかく朱音が教えたDFもう忘れたの!?まさに今それをやられてるじゃん~!」
「え!?朱音っち、火神っちに教えたんスか!?ずるいッス!俺も俺も…」
笠松「うっせぇ!シバくぞ!同じチームだからあり得ることだろうが!」
「でも先輩!前朱音っちは俺の練習メニュー考えてくれるって言ったッス!朱音っち、あの時の約束、俺忘れて無いッスからね!」
『あー…合宿の時の…ごめん、あたしは忘れてた』
「ひどいッス!」
涼君があたしに抱き着いてくる。てか中学校の時はそんなにボディタッチ激しくなかったのに。まあ犬みたいだから良いけど。涼君に思った通り茉実達からの罵声が浴びせられる。それでも頑なにあたしを離そうとしない。とりあえず煩くて迷惑だけはかけたくなかったため、茉実達を宥め、子供をあやす様に涼君の頭を撫でた。それだけですぐに機嫌が直る涼君は単じゅ…じゃなくて、素直だ。
『ま、確かに火神君は馬鹿だけど、大事なことは忘れてないよ。それを抑える津川君が凄いの。DFだけなら涼君とだって張れるかもしれない』
「朱音っちが…俺のこと褒めてくれた…」
「「「「「「「褒めてねーよ」」」」」」
シュンと項垂れる涼君をよそに、誠凛はどんどん苦しめられていく。それに、テツ君のパスが通用しない。
笠松「正邦のDFは全員マンツーマン。…が、並のマンツーじゃねぇ、常に勝負所みてーに超密着でプレッシャーかけてくる。ちょっとやそっとのカットじゃ振りきれねぇ。いくらパスが凄くてもフリーがほとんど出来ないんじゃ威力半減だ」
「DF厳しいのは分かったッスけど、んなやり方じゃ最後まで体力もたないッスよ」
藍「彼らはもつんだよ。古武術を使うから」
古武術を使うことによって、ねじらないことで体の負担が減ってエネルギーロスを減らせるらしい。それがナンバ走り。たしかに厄介な戦法だけど、リコさんが何も対策をしていないとは思えない。
「…けど、このままやられっぱなしで黙ってるようなタマじゃないスよね?」
涼君の言葉通り、火神君が津川君を抜いて見せた。明らかにスピードとキレが上がっている。これならばいくら津川君にもちょっとやそっとじゃ止められないだろう。けれど…