第2章 気づくまでのタイムリミット『冨岡義勇』
私を置いていって話し出す義勇さんに思わず口走ってしまった言葉。
「っ....!!」
言ってからさらに緊張で冷や汗がたらたらと背中に流れた。
義勇さんは私が叫んだことに一瞬だけ目を見開いたがすぐにもとの表情に戻ってじっと私を見つめる。
それに負けじと私も視線を返すが、全く読み取れない表情にしばらくすると困惑してくる。
「....」
(え、何あの顔...全く表情読めないじゃん....)
そう二人でしばらくそうしていると...
「....ありがとう。」
「!!」
義勇さんが先ほどよりも更に柔らかい表情で私に笑いかけた。
その顔に今度は動揺などせず、ただただ愛おしさが湧いてきて私もにこっと笑いかける。
「...こちらこそ、です」
そう言うと義勇さんはそっと私の手を取った。
「...俺はこういうことに慣れていない。お前が何をしたら喜ぶのかもまだ何もわからないが....それでもいいか?」
「ふふ、義勇さんが何も知らないのは当たり前です。これから知っていけばいいんです。だから大丈夫ですよ」
そう言って笑いかけるとまた義勇さんもつられたように笑った。
そしてそのまま、どちらからともなくふわりと柔らかく唇を重ねる。
ふっと唇を離すと、義勇さんは笑みを保ったまま私に話しかけた。
「俺は色恋沙汰なんて、ただの邪魔になるだけかと思ってたが...そうでもないらしいな。」
「へへ、嬉しいです。義勇さんの一人目の恋人になれて。」
私がそう言うと義勇さんは少し黙ってじっと私を見つめた。
何かと思って首を傾げると、どこか拗ねたように声を出す。
「俺は二人目なんて作らない。お前が最初で最後だ。」
「っ....!!」
愛の告白にしか聞こえない言葉に体が熱を上げる。
すると義勇さんは私の体をひょいっともちあげた。
「!?」
私が驚くと、義勇さんは私の耳元で囁く。
「今からお前を抱きに帰りたい。...いいか?」
(っ、そんなの、拒めないに決まってる。)
「...はい。」
そう言うとふっと表情を緩めた義勇さんを横目に見ながら、私はそっと義勇さんの首に手を回した。
今から始まる熱い夜にうんと期待を込めて。
終。