• テキストサイズ

あかいいと。【ハンジ・ゾエ/進撃の巨人】

第10章 りんねの先に


「いいよ、

イって」


「ひ、あぁっ、ハンジさ…!」



荒い息遣いだけが響く。
乱れた髪、どろどろにとろけた私たちの表情。
ベッドには愛の跡がにじんでいた。



「はは…かわいい」

「…なんか今日、激しかった」



私がそう囁くと、ハンジさんは一瞬顔をゆがめる。



「…ねえ、は今幸せ?」

「え?はい、とっても」

「そっか」



彼女は絡めた指に力を込め、泣きそうな瞳で私を見た。



「どうかしました?」



何か変だ。
この人は昔からいつも一人で思い悩む。
笑い飛ばしてくれていいよ、と前置きして、ハンジさんは口を開いた。



「が前世の記憶に囚われていて、今のこの関係は、過去の感情に引っ張られているだけなのかもしれないって…たまに考えちゃうんだ。
ごめん、忘れて」



私は目を丸くした。
どうしてそんなことを?



「ハンジさん」



沸々と滾るこの感情は、怒りか悲しみか。
なんにせよ、この愛しい恋人に伝えなくては。
私は上体を起こし、ベッドの上に座り込む。



「今までそんな風に思っていたんですか?
私からのキスも、言葉も、行為も、ぜんぶ過去の産物だって」

「そういう訳じゃ」


「私は…っ!新しい世界で、新しい人生を歩んでいます。
何回でもあなたに惚れ直して、今ここにいるんです……」



こんなに想いを吐露したのは初めてだ。
鼻の奥がツンと痛い。



「…ごめん」



差し込む月灯りがハンジさんをやわらかに照らす。

綺麗。
あなたのその鷲鼻も、唇も、切なげに揺れる心も。



「ばかだなあ…。そんなところも好きです、ハンジさん」



絞り出すような長い溜息。
ハンジさんは起き上がり、端正な顔を私の首筋に埋めて印をつける。



「ん…っ」

「。来世もその先も永遠に、私の傍にいて欲しい」



どんな呪いより強く、どんな祈りより切実な響き。
私はそれを甘受し、返事の代わりに口づけを贈った。

/ 71ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp