第9章 あなたとりんね 【転生現パロ】
「ハンジさん!?」
困惑に満ちた声を無視し建物の陰に押し込む。
「!何を…」
言い終わらないうちに唇を塞いだ。
「んん…っ!?」
「はっ……」
動揺し苦し気な様子を気遣ってやる余裕なんてなかった。
貪るように彼女が欲しい。
「やだ、ま……っ」
「待てない」
両手を壁に押し付け、私の手の平で動けなくする。
缶コーヒーが手からすべり落ちる鈍い音。
貴女が誰かのものになってしまうなら、いっそ。
「ふっ…も、むり…!ハンジさん!!」
「っ!」
劈くような高い声に、冷水を被せられたように我に返った。
は泣いていた。当たり前だ。
少なからず体格差のある私に迫られ、同意なしのキス。
自分がこんなことをしたなんて信じられなかった。
私はしばし呆然と立ち尽くし、急いで小さな体を抱き起こす。
「ごめん……本当にごめん、」
…最低だ。
彼女に消えない傷を残してしまった。
はいない。恋人でもなんでもない。目の前にいるのは別人、赤の他人なのに。
「……ハンジさん」
「…っ」
「顔を上げて下さい、ハンジ・ゾエ分隊長。」
「……え」
今、誰を。
「いきなりするのは嫌って言ってたじゃないですか。
次はないですからね」
…こんなこと、あっていいのか。
「お久しぶりです」
少し眉を下げてこちらを見る。
ああ、この表情を知っている。
すぐ周りが見えなくなる私に、無茶をするなと窘める顔。
「私も混乱してて、まだあやふやな部分はあるんですけど……。でも確かに覚えています。
書類が散らばった部屋も、あなたと愛しみあった日も、最期の瞬間も。」
これが妄想のなれの果てか。
いや、もうなんでもいい。
「分隊長」
「…うん」
桃色の唇がふんわりと上がる。
「私は、あなたの中にまだいられるのでしょうか」
刹那、私は彼女を抱きとめた。
言葉が出てこない。
好きだ、好きだ、あなたがほんとうに。
「おかえり、」