第4章 浅き夢みし 【現代日本パロ】
つややかに丸い飴をなめながら露店を物色していると、雛壇にぬいぐるみやらフィギュアやらが並べられているテントが見えた。
射的。
…そういえば毎年素通りしていたな。
何とはなしに見つめているとハンジさんに声を掛けられる。
「やりたいの?」
「そういうわけじゃないんですけど」
「そお?…じゃあ私が挑戦しようかな。
行こう!」
「へ!?」
少しびっくりして彼女を見る。
早速お金を払ったハンジさんが目を輝かせて尋ねてきた。
「は何が欲しい?取ってあげる」
「えっ?ええと……右上のゲーム機、とか」
咄嗟に口走ったがあからさまに難しく配置されている。
彼女のことだ。
躍起になってお金を使い切ってしまったら…いや、絶対やるな。
「ハンジさん!あんまりムキにならないでくださいよ。
やったことあるんですか?」
「ないけど…ちょっと頑張ってみるよ」
「…ほどほどに」
いざとなれば財布を取り上げる覚悟をし、私は無言に徹した。
おもちゃの銃を構える姿がサマになっている。
不覚にも見惚れていると、パンッと軽やかな音を立てて箱が倒れた。
高く振りあがる拳と絶叫。
「よっしゃああ!!」
「…やけに上手いですね」
「才能あるのかも」
満足げに掲げられた景品。
やっと格好いいところ見せられてよかったよ、なんて言うから驚いてしまった。
…いつでも思ってるのにな。
でも考えてみると、それを伝えたことなんてなかった。
変な意地が私を踏みとどまらせて。
「…あの、ハンジさん」
「なーに?」
こんなんじゃだめだ。
今日の目標は、少しでも素直になること!
きゅっと眉を寄せハンジさんを見上げる。
「わたしは、いつ…ずっと……その」
「…もうお腹いっぱい?それ私がもらおうか?
あ、花火始まる前にトイレ行く?」
ああもう
悉く伝わらない。
「や、だいじょうぶです…」
私ってかわいくないなあ。
項垂れる様子を不思議そうに眺めるハンジさん。
夜の空気に任せても言えない。馬鹿。