第8章 ひと月の性愛
「瑞稀様、お帰りなさいませ。 美和様もようこそいらっしゃいました」
「ごめんなさい、ワズさん。 いつもお邪魔して」
「いえ、構いません。 お食事はお部屋に?」
「俺は済ませたから、美和の分を」
「承知致しました」
この部屋、シャワーまでついてるのよね。
全部で30畳分位あるのかしら。
自分もこの歳でなかなかいい暮らしをしてると思っていたけど、瑞稀とは格が違う。
シャワーを浴び、バスローブに着替えてテーブルを見ると美味しそうなハンバーグから湯気が立っていた。
「わあ! いただきます!」
「美和ってホント肉食だよなあ」
……どこかでその台詞きいたような。
「だって魚とか野菜って食べた気しないじゃない?」
「そんな身体のどこに入るんだか」
「……瑞稀くんも大概肉食だと思うけど」
意味を分かっているのか分かっていないのか、瑞稀はそう?という顔をした。
「まあ肝心なとこにはついてないみたいだけど、肉」
「え?」
瑞稀の視線の先を見ると美和のバスローブの胸元がはだけていた。
「ひゃっ!?」
慌てて前を綴じ直す美和を瑞稀はくっくっと笑いながら眺めている。
「瑞稀くんはもっとこう、おっきいのが好き?」
「いや別に……いいんじゃないの、人それぞれで」
「じゃ、女性のどの辺が好き?」
「……どこだろ」
「髪とか……笑ったとことか」
瑞稀が頬杖をつきながら視線を彷徨わせて呟く。
その先に、誰か居るのだろうか。
美和の胸に淡い不安が広がる。