第5章 遅れ咲きの茎に輝けるただ一輪
もうそろそろお店が閉店という時間帯、店長は先に上がり澤子が一人で職場の後片付けをしていた所だった。
人の気配を感じ目を上げると三木が不服そうな表情で目の前に立っている。
「三木さん……」
「話そうとしたんだけど、あれからLINEもメールも返信無いし電話も通じないし」
「すみません、ここではちょっと」
「じゃあどこならいいの?」
「わ、私もう、……すみませんけど」
「こないだの事ならもう」
「ごめんなさい、帰って下さい」
「姉さん?」
澤子が入り口に目をやると逸巳が店に入って来た。
「逸巳」
「学校が早く終わって珍しい人に会ったから寄ったんだけど……この人は?」
澤子達の妙な雰囲気を察したのだろう、逸巳は訝しげに三木の顔を見る。
「……また出直す」
三木が気まずそうな様子で店を出て行き、澤子はほっとした表情でそれを見送る。
「大丈夫?」
「うん、ごめ……あれ? あなた」
「あんた、崎元の?」
「え、何、知り合い?」
瑞稀、澤子、逸巳は三人三様に驚いた表情でそれぞれの顔を見詰めた。