第5章 遅れ咲きの茎に輝けるただ一輪
「おい、行こうぜ」
明らかな見た目の不利を感じたのか、一人の男が仲間に声を掛けている。
舌打ちをしてもう一人もその場を去ろうとした。
相手を睨んでいた逸巳もそれで終わりと思い彼等に背を向けて歩き出した。
「大丈夫か」
「あ、小田さん!?」
逸巳の進行方向にいた瑞希は彼に声を掛けたが、直後視界の中に廃材を手にして逸巳に振り下ろそうとする先程の男の姿が見えた。
「後ろ」
「……っわ!」
逸巳が上半身でそれをかわす。
瑞稀はバランスを崩して地べたに手を着きそうになっている男が持っている得物の端に、足首で回転を加えた。
「痛え!」
地面に倒れた瞬間握っていた廃材に圧力をかけられたお陰で男の指は変な方向に曲がり、男は悲鳴を上げている。
「い、痛えよ!」
「やばいよ。 行こうぜ」
逃げるように去る男達の姿を見送りながら逸巳は頭を下げた。
「小田さん! あ、ありがとうございます!」
「俺は何もしてない。 というか、逆に向こうを助けたつもりだが違うか」
「そんな事は……」
自分でも過去に何かやらかした覚えがあるらしい。
逸巳はぐっと言葉に詰まっている。
しかし恐らく、何か理由があっての事なんだろうと瑞希には想像がついた。
こういうタイプは嫌いじゃない。