第4章 希望は頑丈な杖
……何でこんな事になっているのか。
瑞稀は困惑していた。
今彼の肩には女の頭が乗っている。
大学の男たちと適当に飲んで、合コンよろしく近くの席の女達と合流する羽目になり、面倒になって帰ろうとした矢先だった。
「瑞稀くん、飲み直そ」
出口でその女の一人に捕まり彼は今タクシーに乗っている。
「いや俺、帰るし……」
「もう一軒だけ!」
その女は美和と名乗った。
近頃は素人の女もこんな感じなのか。
さっきから腕に胸を押し付けられている。
普通の女を抱えて放り投げるのもどうなんだろう。
最近自分に女難の相でも出てるんだろうか。
瑞稀が考えてるうちに車は彼女のマンションらしき所に着いた。
割と良いマンションだ。
彼女は言動とは余りそぐわない品のいいパンツスーツを着ていた。
やるだけならまだいいが。
瑞稀は自分の『食欲』が怖かった。
一度経験しただけに、もしあの欲がまた現れたら。
万が一親父のように喰う羽目になったら。
「瑞稀くん、もしかしてまだ知らないの?」
目の前の女、美和はそんな暢気な事を言って濡れた瞳で彼を見詰めている。